嚥下食について

西山耳鼻咽喉科医院(横浜市南区)
西山耕一郎


 嚥下機能(飲み込みの能力)が低下すると、のど(咽頭)の動き悪くなり、食事中にムセやすくなります。このように食物等が誤って気管に入ることを誤嚥(ごえん)といいます。
誤嚥の防止には食物形態の工夫も効果がありますが、ムセにくく、飲み込みやすい食べ物の条件は、柔らかいこと、まとまりがあること、くっつきにくいことなどです。


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 まとまり(凝集性)が悪いと、バラバラになって気管に入りやすくなります。お餅のようにくっつき(付着性)やすいと窒息事故を起こす危険があります。また口腔内や咽頭などに張り付いた食物は、あとで唾液に溶け出して誤嚥することもあります。
 そのため適度な粘度でまとまりやすく、ベタつかず、柔らかく変形しながらのど(咽頭)を滑らかに通過するものが、嚥下障害者用の食べ物として良いのです。
 液体は、粘度が低くサラサラしており、のど(咽頭)を通過する速度が速いので、一番誤嚥しやすい食形態です。液体にトロミ剤を使用すると、嚥下機能低下にある程度は対応できますが、限界があります。トロミの濃度を濃くしすぎると、食道入口部の開きが悪い方(食道入口部開大不全)や、飲み込みの力が低下した方(嚥下圧低下)では、逆に飲みづらい場合もあり注意が必要です。
 嚥下機能に対応した食物等(嚥下調整食)を食べたり飲んだりすれば、ある程度は誤嚥による肺炎の発症リスクを減らすことができます。食べ物の飲み込みやすい形態を“かたさ”、“凝集性”、“付着性”の3つで分類する“嚥下食ピラミッド”や、付着性・凝集性・粘性・均質・離水・硬さ・ばらけやすさ等に配慮した“学会分類2013”、咀嚼機能の低下に配慮し“かたさ”で区分した“ユニバーサルデザインフード区分(UDF)”などがあります。


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 キザミ食は、硬いものと柔らかいものを一律の大きさに細かく刻んであり、噛む機能を補完する食形態ですが、凝集性が悪いのでバラバラになりやすく、のど(咽頭)に残りやすく、嚥下機能が低下すると誤嚥のリスクが増加します。
 一人ひとりの嚥下機能を正しく評価し嚥下機能に対応した食物が提供できれば、口から食べることができ、人としての尊厳を保ち誤嚥の減少や栄養の改善を図ることができると考えます。



 
 
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