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嚥下機能検査
北里大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 清野 由輩
飲み込みの機能を評価する際には、まず前提として全身状態や意識がしっかりしているか、呼吸状態が安定していることが必要です。(例えば意識状態として呼びかけに反応しないのであれば評価は難しく、危険なこともあります)。
また口腔内がある程度きれいで湿っているかを確認し、ベッドを30度以上の角度で挙げることが可能で、できれば頭の後ろに枕を入れて少し下を向いた姿勢(頸部前屈)をさせた方がよいでしょう。
画像による検査法:
- 嚥下内視鏡検査(VE)
鼻から柔らかい内視鏡を挿入して、飲み込みの状態を見る検査です。
・食物や唾液などのノドに残る状態(咽頭残留)や声を出す臓器である声帯の動きやノドの感覚を直接調べることができます。
・飲み込みの瞬間の観察はしにくいですが、誤嚥を確認することができます。
・口腔内や食道内の様子は直接見ることはできません。
・誤嚥しにくい食形態、姿勢を決めるために役立ちます。
嚥下造影検査に比べると被爆がなく、ベッドサイドでも実施可能なので、実際に食べている場面での評価が可能なところが有利な点です。
- 嚥下造影検査(VF)・・・嚥下機能評価と病態診断が一番正確にできる検査法です。
レントゲン透視下で硫酸バリウムなどの造影剤を飲み込んでもらい、テレビ画面を記録しながら飲み込みの状態を診断する検査の方法です。
・口への取り込みや噛むことから、のど(咽頭)から食道までの過程を直接観察することができます。
・外からはわからない、気管に水や食べ物、唾液が入る状態やノドの動きを直接観察する事ができます。
・嚥下障害の重症度を確認したり、誤嚥しにくい食形態、姿勢を決めるために役立ちます。つまり嚥下のリハビリに役に立つ情報が得られます。
スクリーニングテスト:
- 反復唾液嚥下テスト(RSST)・・・誤嚥があっても異常なしと判定すること(偽陰性)が多いのですが、スクリーニングとしては有用です。
目的:嚥下反射を随意的に起こす能力を評価します。
方法:人差し指で舌骨を、中指で甲状軟骨を触った状態で、空嚥下を何回できるかを数えます。
判定基準:30秒間で3回以上が正常。
留意点:
・口腔内乾燥がある場合、湿らせてから行います。
・頚部が後屈しないようにします。
・触知しても分かりにくい場合は、聴診で行う場合もあります。
・覚醒不良、口頭指示理解が不良な場合は、できない場合もあります。
- 改訂水飲みテスト(MWST)・・・ノドの感覚が下がっていると、誤嚥しても判らないことがあります(陽性率低下)。
目的:3mlの冷水を一口で嚥下し、送り込み、嚥下反射が起こるまでの時間、むせの有無、咽頭残留の有無や程度などを評価します。
方法:3mlの冷水、または冷茶をシリンジで舌の下へ入れて、嚥下の動作が出るかどうか、むせがあるか、呼吸の変化などを聴診器を首にあて飲み込みの音を確認しながら、評価します。 3mlの冷水の嚥下が可能な場合は、さらに嚥下運動を追加して評価します。
- フードテスト(FT) ・・・ノドの感覚が下がっていると、誤嚥しても判らないことがあります(陽性率低下)。
目的:口からのどへの送り込み、嚥下反射が起こるまでの時間、むせの有無、口腔内やのどに食べ物が残っていないか、評価します。
方法:ティースプーン1杯(3〜4g)のゼリーを嚥下させて、状態を観察します。同時に聴診器を首にあて飲み込みの音を確認しながら行います。嚥下が可能な場合には、さらに嚥下運動を追加して行うこともあります。
留意点:
・嚥下反射を起こりやすくするため、ゼリーは冷やしておきます。
・冷たいスプーンで圧刺激をし、空嚥下を誘導します。
・ワレンベルク症候群などの脳梗塞後や気管カニューレ留置中など誤嚥の危険性が高い患者さんでは、3g以下の量から検査します。
・検査食を誤嚥すると肺炎発症の危険があります。
- 頸部聴診法 ・・・有用性については意見がわかれています。
目的:嚥下音、嚥下前後の呼吸音の聴診により、咽頭期の評価を行います。
方法:左右の頸部の聴診。
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